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絶叫 [小説]

友人に勧められて読んだ本。
とーっても重いミステリー。
600ページを超える長編小説でしたが、苦にならず読み進めることができたのは、物語のテンポがとても良い。数人の視点から一つのことを振り返っていくストーリーはなんとなく湊かなえの作品を思い出すし、事件を追う刑事の人間模様や加害者である女性の重なり合うような人生観がとても面白い。内容はすごくグロテスクで悲惨で、かわいそうな部分もたくさんあるが、どこかで割り切れない納得できない思いを抱えながらもそういう人生を選んでいくのもわかるような気がする。
結末まで読んで、少し安堵している自分がいる。過去を過去として、新しい未来の中に違う人生を歩むことができるのだろうか、不謹慎にもそんなことを考えてしまう。
人生をやり直すということが、今回の小説のようなギリギリの深い部分ではなく、もっと浅い部分で過去を背負ないながらもできるくらいのところであがいていたいなぁと思うのでした。





絶叫 (光文社文庫)

絶叫 (光文社文庫)

  • 作者: 葉真中 顕
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2017/04/28
  • メディア: Kindle版



読み終わったので、紹介してくれた人に報告がてら感想を言うと、自分では気づかなかったもう秘湯tのトリックをおしえてくれた。それを聞いて、小説の最後の方にあったいくつかの言葉がよみがえる。
そして、すっかり騙されている自分に気づく。
何人かの視点から事件が語られるというのはこういうことなのかと…。
それにしても一人では気づかないことを、誰からと一緒に読んだからもう一回楽しめる。こういう読書もいいものだなぁ。

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旅屋おかえり [小説]

原田マハの小説。原田マハといえばアートを題材にした物語が多いが、そればかりではないことを感じられるとても面白い内容だった。
売れない元アイドルが、旅する中で出会い、状況を変えていく。そういう姿を見て楽しい気持ちになる。物語の最後に向かって何気ない一つ一つのエピソードが絡み合っていく。よくできた物語だと言わざるを得ない。しんみりとしながら、明るい人柄を感じながら、ああこんな旅ができたら楽しいだろうなとおもう。
芸能人が旅する番組を見るのは楽しい。そして、そんな芸能人にぜひここに行ってほしいという思いもよくわかる。
そして、私も旅が好きだ。下調べしているときから旅は始まる。いろんなことをいっぱい詰め込んで忙しいくらいの旅が好きだ。なんとなく、芸能人の旅番組のようにスケジュールをたくさん詰め込んだたびにいつもなってしまう。
旅をするということだけで、多くのものを吸収できるし、そこでこんな出会いがあったならさぞかし楽しいだろう。そして、そういう出会いをちゃんとこうやって文字に残せたなら・・・・。
自分の旅と重ねながら、ああこんなとこも行ってみないなぁと思いつつ読み進めた。
そして、自分が旅しながら、出てくるミッションを一緒にクリアしているような感覚になる物語だった。
やっぱり原田マハの物語はおもしろい。






旅屋おかえり (集英社文庫)

旅屋おかえり (集英社文庫)

  • 作者: 原田マハ
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2015/04/03
  • メディア: Kindle版



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向日葵の咲かない夏 [小説]

ぞくぞくするような小説だと言われて紹介された。
その通りにゾクゾクしながら読み進めたミステリー。
ありがたいことは、死んだ人が小動物に宿ってしゃべりだすという現実では起こらないことをあっさりと何の疑いもなく書いてくれたことだ。おかげでリアルな恐怖を感じずに物語の中でドキドキすることができた。
主人公は小学生…でも、本当にそうなのだろうか…。読み終わってもスッキリしない。
この読書後の残る重い空気は何だろうか…。しっかりと後味まで悪くしてくれた。
親戚の家に引き取られるということは、死んでしまったのだろうか。そして、それでも会話しているということは、小動物に宿ったのだろうか。

気持ち悪いなぁと思いながら、ページをめくるのがやめられなくなる。
この気持ちは、クモの居る瓶に、女郎蜘蛛を入れた気持ちと同じなんだろうか。
人の持つ、とても醜いものがたくさん詰まった小説だった。





向日葵の咲かない夏(新潮文庫)

向日葵の咲かない夏(新潮文庫)

  • 作者: 道尾秀介
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/07/01
  • メディア: Kindle版



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本と鍵の季節 [小説]

新聞の広告をみて、図書館で探した。
読んでみると、どこかで聞いたのかな?見たのかな?読んだのかな?
なんとなく既読感のある内容であったが最後まで読み切った。
内容は高校生を主人公としたミステリー。書き方はすごくあっさりとして、細かいことに深く立ち入らないような文章でありながら、おおそんなことが身近で起きるのかぁという内容であった。
そして、最後は中途半端な形で終わっていく。ミステリーの一番いいところはご自由に想像してくださいという内容であった。
高校の図書委員が主人公であるからか、図書館の知識が謎の解決に利用されたり、図書館豆知識がたびたび登場する。図書館に興味のある人にも興味を持たれる小説であろう。





本と鍵の季節 (集英社文庫)

本と鍵の季節 (集英社文庫)

  • 作者: 米澤穂信
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2021/07/01
  • メディア: Kindle版



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未来 [小説]

湊かなえの小説を図書館で借りてきた。小説は買うのは文庫だと決めているが、借りるならハードカバーでも構わない。持ち歩けばトレーニングにもなる?(笑)

湊かなえらしい小説だった。いくつかのエピソードが一つになる。それぞれの視点があり、行ったり来たりする。途中、やるせない気持ちになるし、こんな強く生きれたらいいのになぁと思ったりもする。今回は未来からの手紙が届いたことから始まる。自分にとっては遠い世界の話だと思う虐待やいじめ…でも実際には思った以上に起こっているんだろうなぁ…ああこんな悲惨なことが実際にあるのかと、目を背けたくなるような内容で、でも怖いもの見たさで読み進める。
人間らしいところの描写に頷いたりしながら、ページをめくるたびに沼に深く足を取られるような気持ちにもなる。
一つ言わせてもらえば最後の終わり方が気に入らない…そんな中途半端に終わってしまうのか…この後はどうなるのか…。
そんなことをたくさん考えてしまう。それぞれの続きがあるじゃ納得できない、不幸の沼に沈み込む内容の物語だった。
あぁ、こんなことが現実には起こりませぬように…





未来 (双葉文庫)

未来 (双葉文庫)

  • 作者: 湊かなえ
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2021/08/05
  • メディア: 文庫



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アドラーをじっくり読む [読書]

定期的にアドラーの本は必要である。
「あぁ、こんなに大事なことを忘れていた」と改めて気づくことが多いからだ。
読んだときに、自分の状況に合わせて解釈した内容は、時間ともに状況とともに昇華されてしまう。
そして、また同じことを場を違う形で読むことによって、新しい道しるべを与えてくれるように感じる。アドラー全集を一冊ずつ読んでいくことも、それはそれでいいが、その中からキーワードをまとめてくれた今回の本を読むと、全集の一冊一冊をぱらぱらと読み返したような気持になる。全集の翻訳者が書いた本であるからまた読みやすい。
自分の子育てを振り返るきっかけになるだけではなく、自分自身の人生に責任を持つことが必要とされる。自分がどう育てられてきたかを言い訳にはできない。自分がどう生きていくかの問題だからである。そういうことを考えていくと、くじけそうになるが、多くのひとったちが同じように、人類のために生きることができる社会になれば、自分だけがという気持ちもなくなるだろうし、そう考えているうちはまだまだ学びの途中だと感じた。





アドラーをじっくり読む (中公新書ラクレ)

アドラーをじっくり読む (中公新書ラクレ)

  • 作者: 岸見一郎
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2017/10/13
  • メディア: Kindle版



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ドキュメント [小説]

湊かなえの小説、そう少し前に読んだブロードキャストに続く物語。放送部が全国大会を目指して、行くわけだが、そのために選んだ題材は駅伝。陸上部を目指して入学した少年はケガで放送部を選んだのだが、その駅伝をテーマにドキュメントを作ろうとしたところから、話は違う展開に。ドローンを手に入れるためにではないが、ここでもマラソンが関係してきて話題盛りだくさんの物語だ。そして、そんなドローンが、捉えた映像が問題となり、陸上部も一悶着。さて、全国大会は?と、期待させておいて…そういう展開になるのねと、二転三転の青春ドラマだった。
先輩が抜けてこの三人はこのあとどうなっていくのかなぁ?
そんなことが、気になるところでクライマックス。こりゃ、このシリーズは続くのか?と期待しながら本を閉じた。









ドキュメント

ドキュメント

  • 作者: 湊 かなえ
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2021/03/25
  • メディア: 単行本



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千里眼の復活 [読書]

いつだろうか、松岡圭祐の千里眼シリーズを知り合いに薦めたことがある。何を読もうか迷っているなら読んでみると面白いと思う…。とでも言ったのだろうか。当の本人は忘れていた。
ところが、ある時、「薦めてもらった千里眼に新しいのが出たんです」という言葉をかけられた。
こうやって本がつなぐ関係があるのかと嬉しく思った。そして、「買ったから貸しますよ」とこれまた嬉しい言葉をいただく。
他の本を読んでいながら並行して開いた千里眼。
前作のほとんどのストーリは忘れていたものの、読むうちになんとなくおぼろげに思い出す。そして、しっかりストーリーにのめり込んでいく。
前シリーズの内容は、表情から心理を見透かすというもので、いろいろな事件を解決していく。その、心理と表情についての解説が詳しく書かれているところに、現実の世界を重ね合わせてこんなことができるのかと、表情と心理にかんする本を何冊か読んだのを思い出す。
今回の物語では、その部分が薄かった。そして、表情筋を変えないことで、心理を読ませないというトレーニングを積んだ登場人物が何人も登場する。こうなると千里眼も使えないとなるので、物語が別の方向へ行ってしまう。そして、ほとんど戦争のようなテロ行為がおこり、前は現実の世界と行き来しながら読んでいた記憶だけが残っている自分としては少し残念な思いがした。
そう考えながら読み進めていたものの、いつの間にかしっかりとストーリーの展開にハラハラして読んでしまった。非現実的な内容だと思って物語を楽しんだが、こういう戦闘が実際にはどこかで起きている。平和ボケしているのは自分なのかもしれない。そして、自衛隊という組織を通して描写される大きな組織、階級社会の時代錯誤。こういう組織ではこれからの時代を守っていくことができないのではないか。しかし、平和だからこそこういう巨大組織が成り立っているようにも感じる。
巨大組織が細分化され、縦の組織が横に繋がる組織に変わってきている。そんなふうにやっぱり現実と重ね合わせながら読むことができるのが物語の楽しい部分である。このシリーズ、これからも注目だな。









千里眼の復活 「千里眼」シリーズ (角川文庫)

千里眼の復活 「千里眼」シリーズ (角川文庫)

  • 作者: 松岡 圭祐
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2021/04/23
  • メディア: Kindle版



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ブロードキャスト [小説]

久しぶりに自分で購入した小説。最近は図書館で借りることの方が多い。
湊かなえの小説を読むときは、今回はどんな展開でハラハラさせられるのだろうかと思いながらページをめくるのが楽しみである。
で、「放送部」の話(笑)。なんともモヤモヤする青春ドラマだ。
陸上をやるために有名校に進学したが合格発表の帰りに事故にあい、陸上を断念した少年が、放送部と出会うが、まさに「放送部か」というスタートからである。
陸上の駅伝と、放送部と、その活動に共通するものはある。怪我が治った時に、どんな選択をするのかを考えながら、読み進めることができた。
湊かなえらしさは、物語の構成にある。最後にそのシーンが来るのねという、そんな展開にドラマが一つにまとまる。
(ブックカバーを外して、気づく。最後に書かれていた「ラジオドラマ」は短編だそうだ。でも、文庫本としてとってもよくまとまっている。短編が集まって湊かなえの長編になるというのはやっぱり湊かなえらしいのだ。)
こういう青春も悪くはないのだろうと、運動ばかりしてきた自分の価値観に一石を投じる。
解説を読むと、「うんうん」と思う。そして続編の存在を知って、また楽しみが増えるのだった。





ブロードキャスト【電子特典付き】 (角川文庫)

ブロードキャスト【電子特典付き】 (角川文庫)

  • 作者: 湊 かなえ
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2021/01/22
  • メディア: Kindle版



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52ヘルツのクジラたち [小説]

本屋大賞2021の話題の小説。
52ヘルツのクジラの鳴き声は、海の中では仲間に届かないそうだ。僕には聞こえない声で助けてと叫ぶ声があるのだろうか。僕の声は人にちゃんと届いているのだろうか。
いろいろなつらい過去をもつ人たちが、そんなつらさを声にならない声で共鳴しあう。ああ、こんなに切ないことはあるのだろうか。誰かが受け止めてくれたときはすでに遅かったり、他の誰かを傷つけていたり…。
虐待を受けた二人の物語が重なり合っていくが、その声を聞くことができる力も、同じ境遇からなのか。
読んでいて、自分ならどうするのか、自分なら聞こえるのかと、そして、こんな不幸なことが実際にも起こっているのだろうと思いながら読み進めた。
さすが、本屋大賞に選ばれただけある。





52ヘルツのクジラたち

52ヘルツのクジラたち

  • 作者: 町田そのこ
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2020/04/21
  • メディア: Kindle版



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