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どもる体 [読書]

どもる体。どもる…吃音のことである。
吃音を持つ人たちのインタビューや吃音に対する対応やこれまでの治療法について難しくなくまとめられている。医学的というようりも臨床的な体験談の本である。
紹介されて手に取った本だが…個人的には文字面を追いかけるばかりの読書になってしまった。
あまり自分の中に残ったものはない。
しかし、吃音に対する当事者の考えの中で、吃音が恥ずかしいものとして、治そうという努力をしてきた。そして、言い換えやそれ以外の方法(この方法が人によって違うようである)によって、克服したときに吃音が治ったと評価されたそうださ。ところが、本人の中では治ってはいない。そして、どもらないという状態こそが、自分の自然な状態ではない強制された、のっとられたと表現されていただろうか、状況だというのだ。
他者からの評価ではなく、自分自身の自然な状態について考えた時に、どもることを受け入れながら話すことが大切だと思ったそうだ。この部分にすごく共感できるのは自分もそういう年代になったからであろう。学齢期の成長段階では、他者比較の中で評価されて、同じであることを是として生活してきた。しかし、40代になりそういう事に疲れてしまったのだ。そしたら、自分が良ければ、生きやすければ、それがいいと、ある意味、勝負から降りたような状態なんだと思う。
私は吃音はないが、他の人からどう思われるかということに今もなお苦しむ。でも、まさにそれは自分ではないものと戦っているのだと思う。
このシリーズは「科学性」「専門性」「主体性」といったことばだけでは語りきれない地点から8≪ケア≫の世界を探るシリーズだそうだ。今更ながらに興味がわいてきた…。

さて、他の本でも読んだことがある内容であったが、下記の内容に改めて共感した。メモ代わりに。
このことをあざやかに論じているのが、ドイツの劇作家ハインリヒ・フォン・クライストです。クライストは、1805-06年に書かれた「語りながら次第に思考を練り上げていくことについて」という文章の中で、「食欲は食べると同時にわくものだ」jというフランスの諺をもじって、「思考はしゃべると同時にわくものだ」と宣言します。つまり私たちは、常に前もって自分が言おうとすることを分かって言っているのではなく、しばしば言うのと同時に、おのずと言うべき内容が生まれてくるというのです。






どもる体 (シリーズ ケアをひらく)

どもる体 (シリーズ ケアをひらく)

  • 作者: 伊藤 亜紗
  • 出版社/メーカー: 医学書院
  • 発売日: 2018/05/28
  • メディア: 単行本



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最後の医者は桜を見上げて君を思う [小説]

人の生き死にに関する物語。医療を題材にした内容であった。
医大時代の同級生である3人の医者が何人かの患者の死に関わる。
その関わる患者により、医者は悩み考え揺れる。
そして、どの話も努力むなしく患者は死んでいく。死期を伸ばすために行われる辛く苦しい治療は必要なのか。それよりも死を迎え入れて、自分の生き方であり死に方を考えるのか。
医者によって考え方が違う。どの医者も意見としては真っ当であるのに、方向性の違いからぎくしゃくする関係。そして、一人の患者の死が、新しい物語をつくる。

さて、手術が成功して助かるなんておめでたい物語はない。でも、実際の医療でもきっとそうなんだと思う。助けてほしいと願っても、万に一の可能性にかけても、叶う保証はない。一つ目のハードルを越えれば二つ目のハードルがある。100%ではない治療には必ずうまくいかなかった人が存在する。

考えると怖い話だと思う。98%の人は成功する。失敗した2%の人は必ず存在する。
同じ命なのだ。

そうやって迷い考えながら向き合うことが必要なんだろうな。
読み終えて、スッキリしない物語だ。





最後の医者は桜を見上げて君を想う (TO文庫)

最後の医者は桜を見上げて君を想う (TO文庫)

  • 出版社/メーカー: TOブックス
  • 発売日: 2016/11/18
  • メディア: Kindle版



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さすらい猫ノアの伝説 [読書]

重松清の小説には子どもに読ませたい物語と読ませたくない物語がある。時々、妙に性に執着するものがあるが、今回のは小学生に読ませたいと思う本だ。
クラスの忘れ物を知らせるためにやってくるクロネコ。決して荷物を届けにくる宅配便ではない。
最初のメッセージこそ前の学校からのメモであるが、その後は猫が何を言おうとしながら、それぞれが考えるのである。毎日の中でふと立ち止まって考える時間を与えてくれる。もしかすると自分自身にもそういう時間が必要なのかもしれない。立ち止まると見える違う景色があるのかもしれないと感じさせる。そして、子どもが言葉にせずに発する心の声が妙に自分の声と重なる。こういうのが重松だよなぁと思う。
この物語は子ども向けの別のシリーズで納められているものを、セットにして文庫化されたものだ。一つは担任の交代から荒れゆく子どもたちを救ってくれる。そしてもう一つは転校生のほとんどこない田舎の学校で数か月過ごした転校生の物語。
行間を読むとはこういうことなのかなぁと思うほどに、文字でない部分を想像しながら読める。自分にもこういう気持ちがあるって改めて気づかせてくれる。
やっぱり、子どもに薦めたいと思う。





さすらい猫ノアの伝説 (講談社文庫)

さすらい猫ノアの伝説 (講談社文庫)

  • 作者: 重松 清
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/08/09
  • メディア: 文庫



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傍聞き [読書]

傍聞きと書いてかたえぎきの読むそうな。長岡弘樹の短編集。グッと引き込まれてページをめくる手が止まらなくなるが、短編のお陰でキリのよいとこまで読める。
警察、消防、救急などを題材にした短編が4つ。ドキッとしながら読み進めれるし、推理しながら考えて読める。
なかなか面白い小説だった。キムタクの教場をドラマで
見て手に取った。




傍聞き (双葉文庫)

傍聞き (双葉文庫)

  • 作者: 長岡 弘樹
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2011/09/15
  • メディア: 文庫



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心理学をまじめに考える方法 [読書]

読み終えるまでに何ヵ月かけたのだろうか…。
もう、最初の内容は思い出せない。
物事を見るためには批判的な思考が大切である。
その批判的思考は、これあmで日本ではあまり教えられてこなかった。
批判的というと、文句をいうというか、否定するというように捉えがちであるが、そうではない。自分の意見や客観性をもって、改めて考えなおすことで、否定することではない。そういうトレーニングを積んでこないと、本書の中にある、統計的にはほとんど起こらないが、身近で起こったことが、自分の判断を狂わせることがたくさんある。
統計には個別の名前はない。集団に対しての確立である。ところが、自分の身の回りであればここに名前が入る。だから、現実的に感じてしまうのだが、個人は未確定な個人であり、集団となった時に初めて統計的な考えが意味を持つ。
心理学は、大きなカテゴリーの中で、語られてきたが、多くの場面で検証された内容とされていない内容がまとめて扱われることが問題である。
本書の最後にあるように、経済学を学べば全ての人が億万長者になるわけではない。しかし、心理学を学べば人の心が手に取るようにわかるようになるのでは?と考えがちだ。ある非日常的な一場面を作り上げて実験がなされ、通常場面との違いを指摘される。しかし、学問体系としてはそういう一つ一つの積み重ねが大きな学問を作り上げている。その一つ一つの積み重ねを、追実験し、検証されていくことの大切さを本書は物語る。
まさに、そのように一つ一つの話題に裏付けを記載しながら作成されているこういった本は本当に読むのに時間がかかるし、本の上で文字を追うだけになってしまうのは、私の未熟さであろう。
そう考えると心理学をにおわせながらも検証されない内容を書いてある本はもっと簡単に読めて頭に残りやすい。しかし、それはどこまでいっても心理学ではない。

自分でも何を言いたいかわからなくなってきたが、心理学はまだまだ若造でこれからの学問だと思った次第である。






心理学をまじめに考える方法:真実を見抜く批判的思考

心理学をまじめに考える方法:真実を見抜く批判的思考

  • 出版社/メーカー: 誠信書房
  • 発売日: 2016/07/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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ルビィ [読書]

久しぶりに感じる重松作品を読んだ後のこの感覚。
どう文字に表現すればいいのか、冷たいような生ぬるいようなそういう自分でもどっちとも捉えれる感覚。こういうのを文字で表現できるようになると小説家にもなれたりすのかなぁ?とも思ってみたり。
重松清は本当にこういう体験をしたのだろうか?いや、してないと思う。
どこかで自分と重ねながら小説を書いていくのがうまいんだろうなぁ。だから、空想の世界であっても物語の中に共感できる部分がたくさんある。事件を解決するわけではないし、感動的なことがあるわけでもない。でも、もっとリアルに人間の汚いところの中にある葛藤や、人には話せないような思いの中にある苦しさをしっかりと文字にしてくれる。
自殺を考える小説家と、自殺をしてしまった少女が繰り広げる物語。最後はハッピーエンド?にはなりきらない物語。あぁ、重松作品だなぁ。
命の大切さを考えさせて、でもそこにある葛藤を認めてあげて、カウンセラーみたいな小説だと思う。
読みだしたらページをめくる手を止められない。また、重松作品読みたいけど、続けてだと浸りすぎてしまうから敬遠したい気持ちもある。こういう葛藤が人生をややこしくするんだろうなぁ。






ルビィ (講談社文庫)

ルビィ (講談社文庫)

  • 作者: 重松 清
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2020/09/15
  • メディア: 文庫



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JR上野駅公園口 [読書]

2020年の全米図書賞というアメリカを代表する賞の翻訳部門にて日本の小説が選ばれたということを聞いた。さて、どんな本なのか。もちろん私は英語に翻訳された本は読めないので原書であるこの小説を手に取ったのだ。

読んでいて思うことは、どこで場面が変わったのかがわかりにくい。場面の変化の多くの場合は、語り口調が変わったことで、時代も場所も変わっていく。おかげで中々内容が頭に入ってこないだけではなく、英訳されると、日本語のこの方言をどのように訳すのだろうと、別のことが気になるくらい。かといって、英訳された本に手を出すことはない。

さて、戦後に福島で生活し、出稼ぎ労働者として東京へ来た主人公の、その人生とは何だったのか。長男は31歳のこれからと言うときに、突然死をし、定年を迎えて老後を過ごそうとしたところで、妻に先立たれ、孫に迷惑をかけまいと、東京に改めて単身出てきたうえで、ホームレス。その人生に天皇との関わりを絡めながら、ホームレスの厳しい実態にさらに天皇を絡める。淡々と読み進めるものの、そんなにつらい時代があったのかと思っているうちに、いやいや現在もなお、上野でホームレスたちが苦しむ姿を、少年のホームレス狩りと並べられて、山狩りという行政の対応についても書かれている。そんな最後に地震に津波。

なんとも感想の残せない物語。読者として何を書けばよいのか…。そんなことを考えさせられる物語であった。
これが私の2021年、最初の読書である。
今年もフラフラしながら時間つぶしに読書をして、自分の思うことを書き連ねていきたい。







JR上野駅公園口

JR上野駅公園口

  • 作者: 柳 美里
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2014/03/19
  • メディア: 単行本



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