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52ヘルツのクジラたち [小説]

本屋大賞2021の話題の小説。
52ヘルツのクジラの鳴き声は、海の中では仲間に届かないそうだ。僕には聞こえない声で助けてと叫ぶ声があるのだろうか。僕の声は人にちゃんと届いているのだろうか。
いろいろなつらい過去をもつ人たちが、そんなつらさを声にならない声で共鳴しあう。ああ、こんなに切ないことはあるのだろうか。誰かが受け止めてくれたときはすでに遅かったり、他の誰かを傷つけていたり…。
虐待を受けた二人の物語が重なり合っていくが、その声を聞くことができる力も、同じ境遇からなのか。
読んでいて、自分ならどうするのか、自分なら聞こえるのかと、そして、こんな不幸なことが実際にも起こっているのだろうと思いながら読み進めた。
さすが、本屋大賞に選ばれただけある。





52ヘルツのクジラたち

52ヘルツのクジラたち

  • 作者: 町田そのこ
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2020/04/21
  • メディア: Kindle版



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悪魔とプリン嬢 [小説]

パウロ・コエーリョの小説。
日本語に訳すときに表現が難しくなるのか。もともと難しく書いているのか…。なんとも読みづらい小説だった。
金がなければ起こらない問題を、自分のものではない金を自分たちのものにするために、一人の命を差し出すことに葛藤する町。人の欲は自制心を超えるのか。悪魔の囁きか天使の囁きか、普段の生活のなかでも起こりうる葛藤をひとつの物語として表現している。
正しさや正義、それまでの倫理を、脅かし、そして欲に負けない正しさを求める教訓めいたパウロ・コエーリョらしい物語だった。




悪魔とプリン嬢 (角川文庫)

悪魔とプリン嬢 (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2014/11/10
  • メディア: Kindle版



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モダン [小説]

読書日和が続く今日この頃。
こんな季節は芝に寝転がって読書を楽しみたいものであるが、年度の変わり目はそうも言っていられない。
原田マハの薄い文庫を手に取った。
短編集である。キュレーターとしての経験を活かした作品である。
リアルな部分が豊富なゆえに、なんとも小説らしからぬところを感じてしまうくらいだ。
個人的には、もっと物語らしい物語を求めてしまう。
ニューヨーク近代美術館(MOMA)をその舞台に繰り広げられる物語は、原田マハらしく史実と空想を織り交ぜたものだった。
私も学生時代に、ニューヨークに行ったことがある。その時にMOMAに訪れたが、その大きさに驚く一方、美術品の価値や感動がわからずに、足早に歩いて、結果的には行ったという記憶しかない。
今の自分が行ったら違うのか?それとも同じなのか…。どうもそんなことを考えながら読んだ一冊だった。





モダン (文春文庫)

モダン (文春文庫)

  • 作者: 原田 マハ
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2018/04/10
  • メディア: Kindle版



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カフーを待ちわびて [小説]

なんだろうか...読み終わった後に残るこの切ないような気持ちは。旅の道連れに選んだ小説。長い電車の中で読みながら旅をした。
今回の小説は沖縄の与那喜島を舞台にした、モジモジ男の恋の物語だった。不思議な女性、幸はなんともべっぴんさんで、そんなアンバランスな二人が恋をしながら、親友の戯言に振り回されていく物語。
カフーと言うのは犬の名前であるが、沖縄では幸せのことをカフーと言うのだそうだ。そして、幸せと幸を絡ませてのカフーを待ちわびてなのだと思う。
あぁこんなピュアな恋があるのかなと思う一方で、コロナ渦でよんだことで、変にリゾート計画を斜めに読んでしまう自分がいる。やっぱり小説は読んだときの自分や社会的状況を踏まえて読んでしまうから面白い。
そして、原田マハの最初の小説なのだと。こんな物語がふと思い浮かんでしまう彼女もさすがだと思う。
久しぶりに退屈することなくページをめくるのが楽しい小説だった。






カフーを待ちわびて (宝島社文庫)

カフーを待ちわびて (宝島社文庫)

  • 作者: 原田 マハ
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2008/05/12
  • メディア: 文庫



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風の中のマリア [小説]

小説読みたくて手にとった本。百田尚樹も何冊か読んだけど、新しいテイストの物語だった。やっぱり面白い。スズメバチの生態を擬人化しながら書いた物語。最初は人間の恋物語くらいを想像しながら手に取ったから、拍子抜けして、ハチの物語なら読むのをやめようかしらなんて思ったのに、リアルでありながら、ちゃんと物語だからすごく引き込まれてしまった。
そして、数日で読みきってしまった。ハチの生態をこうやって知るととても興味深い。本能のまま、種の保存のためにその時々に違う行動をして、何代にもわたって今も生き続けるわけだから、そこが物語になってしかるべきである。
なんかとっても愛着のわく存在になったスズメバチだが、やっぱり実際には会いたくないものだ。(笑)





風の中のマリア (講談社文庫)

風の中のマリア (講談社文庫)

  • 作者: 百田尚樹
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2020/06/01
  • メディア: Kindle版



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あなたの人生、逆転させます [小説]

岡田尊司という精神科医の新書は読みやすい。そんな彼が心理を題材にして小笠原慧というペンネームで小説を書いている。
精神疾患の症状やその治療について、物語として書かれていると理解しやすいし、想像をしやすい。
今回は新米の心理士がクリニックで仕事をしながら精神科医の先生からアドバイスを受けたり、他者の治療に自分を重ねたりという物語だ。
最初はとっても興味深く、実際の心理療法もこうやって行われるのかと思って読んでいたが、愛着についての話や性に関する話が出てくると、本当にそうやって決めた治療でいいのだろうかと疑問に思う。
物語なのでうまく転がるようになっているだろうし、その考えは確かにぴったりくなるなぁと思うのだが、心の奥底でなんか違うというかそんなに単純なものなのだろうかと思う。
しかし、この物語では病院でのことが書かれているだけで、実際の生活の中でどんな風に苦しんで改善していくのかということは当然のことながら書かれていない。
変に専門家の書く小説だと思って読むからやっぱりよくないのかもしれない。
小説家として書いた物語はそれ以上でもそれ以下でもないのだろう。

それでも内容としても興味の湧くものだったので楽しく読み終えることができた。
リアルと想像を切り分けて読む必要がある小説だと思う。





あなたの人生、逆転させます: 新米療法士・美夢のメンタルクリニック日誌

あなたの人生、逆転させます: 新米療法士・美夢のメンタルクリニック日誌

  • 作者: 小笠原 慧
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/01/22
  • メディア: 単行本



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ギフト [小説]

図書館を歩いていてふと気になる小説を見つけた。原田マハのギフトであった。きれいな本だなぁとおもった。借りてきたけれどしばらくは机の上に置いてあった。他に読んでいる本があったからだ。
そして、ようやく手に取った時に、短編集だと知った。なぜだかわからないけれど、自分の中では少しがっかりした気持ちだった。
本当に短い物語がいくつも入っている。そして、恋の物語が多い。ちょっとした時間に一つの物語を読むことができるが、自分の中ではさっぱりしすぎてあまり残らないというのが印象だ。原田マハのこれまでに読んだ本と違う印象。途中に多くの挿絵があり、一言でいうと春らしい印象。本を読むのが苦手という人にはちょうど良い本なのかもしれない。
爽やかな物語…読む時期が悪かったのかなぁ。一つ一つはとても気持ちよく読めるのだが、絵空事な感じがしてしまう。
今の自分には似合わない、別世界だったのかもしれない。





ギフト

ギフト

  • 作者: 原田マハ
  • 出版社/メーカー: イースト・プレス
  • 発売日: 2013/12/20
  • メディア: Kindle版



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あなたの本 [小説]

誉田哲也の短編集だ。
誉田哲也の小説をこれまでに読んだことがないと思っていたが、最後の解説を読むと、これまでに手に取ったことのある小説もある。
それにしてもこの短編集は一つのテーマにまとめられることができない。ひとつまとめるとすれば、「最後まで読んで、肩透かし」というような内容が多いかな。つまらないという意味ではない。どれも落ちのある短編集だ。
さて、本書の題名となった「あなたの本」最後にどんな落ちを見せてくれるのかと思えば、「そうきたか」というものであった。
全ての物語を読んで、最後の解説を読むと、こんなに納得できる解説はこれまでにあまりないと思うほどにすばらしい。
短い時間に少しずつには、とても良い本だった。






あなたの本 (中公文庫)

あなたの本 (中公文庫)

  • 作者: 誉田哲也
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2015/01/30
  • メディア: Kindle版



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禁じられた楽園 [小説]

新しい世界を求めて図書館で借りてきた小説である。
題名にひかれたのだと思う。
しかし、禁じられた楽園というタイトルはこの小説にふさわしいのだろうか。
そうだなぁ。スッキリするところのない...お化け屋敷の暗いところを歩いている気分。読み進めても、現実ばなれした、次のページを読み進めるのに戸惑う気持ち。まさに、お化け屋敷の暗い廊下を歩いているような。
作者がこれを求めていたのなら成功したといえる。しかし、それは禁じられた楽園なのだろうか。
僕はどんな物語を求めて、この小説を手にしたのかというところが問題となる。それは登場人物たちが一つの場所に集まっていく心境と似たものだろうか。こんなことを求めてないと思いながら先に進んでしまうのだ。
一つの言えるのは、ラストがあまりに急展開で、あっさりとしているのは、連載小説の事情なのか?と思うほど...。

だいたい、僕はホラーが苦手なんだ!





禁じられた楽園 〈新装版〉 (徳間文庫)

禁じられた楽園 〈新装版〉 (徳間文庫)

  • 作者: 恩田陸
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2020/03/06
  • メディア: 文庫



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最後の医者は桜を見上げて君を思う [小説]

人の生き死にに関する物語。医療を題材にした内容であった。
医大時代の同級生である3人の医者が何人かの患者の死に関わる。
その関わる患者により、医者は悩み考え揺れる。
そして、どの話も努力むなしく患者は死んでいく。死期を伸ばすために行われる辛く苦しい治療は必要なのか。それよりも死を迎え入れて、自分の生き方であり死に方を考えるのか。
医者によって考え方が違う。どの医者も意見としては真っ当であるのに、方向性の違いからぎくしゃくする関係。そして、一人の患者の死が、新しい物語をつくる。

さて、手術が成功して助かるなんておめでたい物語はない。でも、実際の医療でもきっとそうなんだと思う。助けてほしいと願っても、万に一の可能性にかけても、叶う保証はない。一つ目のハードルを越えれば二つ目のハードルがある。100%ではない治療には必ずうまくいかなかった人が存在する。

考えると怖い話だと思う。98%の人は成功する。失敗した2%の人は必ず存在する。
同じ命なのだ。

そうやって迷い考えながら向き合うことが必要なんだろうな。
読み終えて、スッキリしない物語だ。





最後の医者は桜を見上げて君を想う (TO文庫)

最後の医者は桜を見上げて君を想う (TO文庫)

  • 出版社/メーカー: TOブックス
  • 発売日: 2016/11/18
  • メディア: Kindle版



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